本店移転登記で印鑑届出が必要なケースとは?
本店移転登記の時に忘れがちな手続きが、印鑑届出です。印鑑届出の手続きをしないと、法務局から不備があると指摘され、手続き完了が遅くなるので注意が必要です。
この記事では、本店移転登記の際に印鑑届出が必要なケースや届出書の記載方法などについて解説します。
管轄外の場合は印鑑届出が必要です
会社の本店を移転した場合、登記申請をする必要があります。そして、本店移転登記と併せて「印鑑届出」が必要なケースがあります。
それは、本店を「管轄区域外」に移転する場合です。
管轄区域外に本店を移転すると、それまで印鑑届出をしていた法務局と、移転後に管轄する法務局が異なるため、新しく管轄となる法務局に改めて会社の印を届け出る必要があるのです。
管轄内移転は不要
一方で、管轄区域内で本店移転をする場合には、印鑑届出の必要はありません。本店移転をしても管轄の法務局に変更がないため、再度届出をしなくても、本店移転登記だけすれば手続きは完了します。本店移転登記後に会社の印鑑証明書を取得すると、自動的に新しい本店所在地が記載された印鑑証明書が発行されます。
管轄外と管轄内の違いは?
法務局は全国に本局、支局、出張所などが多数存在します。そして、それぞれの法務局ごとに管轄する(受け持つ)会社の本店所在地の地域が決まっています。
たとえば、東京都新宿区に本店がある会社を管轄するのは、東京法務局「新宿出張所」です。
この会社が会社を新宿区域内に移転する場合は、管轄内移転となります。
一方、この会社が本店を東京都渋谷区に移転する場合、渋谷区を管轄するのは東京法務局「渋谷出張所」となり、管轄の法務局が異なるため管轄外移転となります。
管轄外移転となるか管轄内移転となるかを判断するためには、法務局のHPを確認し、法務局ごとの管轄区域を確認しましょう。なお、複数の市区町村を管轄する法務局もあるため、市区町村が変われば必ず管轄外となるわけではありません。(例 渋谷区と目黒区はどちらも東京法務局渋谷出張所の管轄のため、渋谷区から目黒区への本店移転は「管轄内」移転となります。)
印鑑届書の記入例
印鑑届書に記入する内容は、以下の通りです。
①届出印の押印
会社の印を鮮明に押印します。
②商号・名称
会社の正式名称を記載します。
③本店・主たる事務所
会社の本店所在地を記載します。この時に記載するのは、移転後の新しい本店所在地です。
④印鑑提出者
資格:代表取締役・取締役などから選んで〇をつけます。
氏名:代表取締役など代表者の氏名を記載します。
生年月日:代表取締役など代表取締役の生年月日を記載します。
⑤会社法人等番号
会社法人等番号を記載します。番号は、登記事項証明書に記載されているほか、国税庁の会社法人番号公表サイトで検索することもできます。
⑥印鑑カード引き継ぎの有無
今まで使用していた印鑑カードをそのまま使用する場合、「印鑑カードを引き継ぐ」にレ点を入れ、印鑑カード番号、前任者(代表者に変更がなければ現在の代表者名)を記入します。
新たな印鑑カードの発行を希望する場合、「印鑑カードは引き継がない」にレ点を入れます。その場合、別途印鑑カード交付申請書を提出する必要があります。
⑦届出人
印鑑提出をするのが代表者本人の場合には、本人の住所、氏名を記載します。
代理人によって提出する場合には、代理人の住所、氏名を記載します。
⑧委任状
代理人によって印鑑届出を行う場合には、代理人の住所氏名と委任者(代表者)の住所氏名を記載し、委任者の個人の実印を押印します。この場合、個人の印鑑証明書の提出も必要です。
管轄外移転登記の流れと必要書類
管轄外の本店移転登記の流れと必要書類を簡単に説明します。
手続きの流れ
①株主総会での決議
管轄外の本店移転では、定款変更が必要となるため株主総会特別決議が必要です。
②取締役会決議や取締役の決定
具体的な本店所在地や移転時期について、取締役会又は取締役の決定もしくは株主総会で決議します。
③登記申請
登記に必要となる株主総会議事録等を作成し、現在の本店を管轄する法務局に申請書2通(現在管轄する法務局宛、新たに管轄する法務局宛)と添付書類を提出します。
詳しくはこちらの記事を参照してください。
必要書類
①申請書
移転前の管轄法務局宛の申請書と移転後の管轄法務局宛の2種類の申請書を提出します。
②株主総会議事録
定款変更決議をした株主総会議事録を提出します。
③株主リスト
上記株主総会開催時の株主がわかる株主リストを提出します。
④取締役会議事録又は取締役の決定書
取締役会や取締役の決定により本店所在地等を決めた場合に提出します。
⑤印鑑届書
⑥(代理人が印鑑届書を提出する場合)代表者個人の印鑑証明書
まとめ
管轄外に本店移転登記をする場合、印鑑届出の手続きをうっかり失念しないように気を付けましょう。
また、管轄外の本店移転登記は、申請書が2種類必要になったり、添付書類も増えるなど管轄内移転と比べて難易度が高くなります。
自分一人で書類を完ぺきに整えるのは難しく、何度も法務局に足を運ぶことになってしまうケースも多く見られます。
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