定款を変えればOK?役員任期を変更する方法
株式会社の役員には必ず任期があり、任期が満了するたびに役員変更登記が必要です。それでは、「会社の役員の任期を伸ばしたい」「短縮したい」と思った場合、どのようにすればよいのでしょうか。
ここでは、役員の任期を変更する方法や注意点について解説します。
役員の任期を変更するには?
株式会社の役員の任期は、定款に記載されています。そのため、役員の任期を変更するためには、会社の定款を変更する必要があります。
定款とは、会社のルールを定めたもので、会社設立時に必ず作成しています。この定款を変更するためには、株主総会の特別決議で変更について可決される必要があります。
役員の任期を変更する手順
株式会社の役員の任期を変更する場合の具体的な手順を解説します。
手順①:現在の役員任期を定款で確認
まずは、現在の役員の任期を確認します。
役員の任期は登記される内容ではないため、会社の登記簿謄本(全部事項証明書)を見ても任期を知ることはできません。必ず会社の定款を見て確認しましょう。
多くの場合、以下のように定められています。
「取締役の任期は、選任後〇年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結までとする」
この〇の部分に、1から10までのいずれかの年数が入ります。
手順②:株主総会特別決議を行う
役員の任期を伸ばしたり短縮したりしたい場合には、株主総会の特別決議で変更案が可決される必要があります。
特別決議は、議決権の過半数を有する株主が出席して、出席した株主の議決権の3分の2以上が賛成することで可決されます。
役員の任期の変更が可決された場合、現在就任している役員は、変更後の任期が適用されます。
たとえば、元々の役員の任期が2年だった会社で、令和2年4月に選任された役員がいた場合に、令和4年3月の株主総会で役員任期が5年に変更された場合、この役員の任期は令和7年4月までとなります。
変更されたとき(令和4年3月)から5年ではなく、あくまでもその役員が選任されたとき(令和2年4月)から5年ということになります。
手順③:株主総会議事録と定款を作成する
株主総会終了後に、決議の内容についての株主総会議事録を作成します。
また、役員任期を変更した内容を反映した定款を作成します。
会社を設立した時は、定款を作成した後に公証役場での認証手続きが必要ですが、定款変更をしても再度認証手続きをする必要はありません。
費用
役員の任期を変更しても、登記申請をする必要はないため、登録免許税などの税金はかかりません。
自分で株主総会議事録と定款作成を行えば、特に費用が掛かることはありません。書類作成を司法書士に依頼する場合には、費用が掛かります。
必要書類
役員任期を変更するときに必要となる書類は、株主総会議事録と定款です。それぞれ作成したうえで、会社で保管します。
役員の任期を変更するときの注意点
役員の任期を変更するときの注意点を紹介します。
任期を伸長できない会社もあるため要注意
すべての株式会社が役員の任期を伸ばすことができるわけではなく、伸ばすことができない会社もあります。
「公開会社」は、役員の任期を「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」よりも伸ばすことができません。
公開会社とは、「株式の譲渡制限に関する規定」がない会社のことで、会社の承諾不要で自由に株式の譲渡ができる会社のことです。
自分の会社が、「公開会社」なのか「非公開会社」(株式の譲渡制限に関する規定がある会社)なのかは、登記されているため、会社の登記簿謄本(全部事項証明書)を見れば確認することができます。
現在「公開会社」になっていて、役員の任期を伸ばしたい場合には、まずは「株式の譲渡制限に関する規定」を設定する手続きが必要となります。
任期が長い場合は役員を退任させるのが難しい
「公開会社」ではない会社の場合、取締役と監査役の任期を最長で10年まで伸ばすことができます。
役員の任期を10年にすれば、基本的に10年に1回だけ役員変更登記をすればよいことになり、手間やお金がかからないというメリットがあります。そのため、深く考えずに役員任期を10年にしたいと考える場合も多いようです。
ただし、役員が自分だけの場合はそれでも問題ありませんが、自分以外にも役員がいる場合、役員任期を10年にすると、基本的に10年間その人が役員を続けることになります。
万が一その人との関係性が悪化したり、その人が役員としての能力が不十分だと感じたりした場合に、役員を退任してもらうことが難しくなります。
役員の退任は、任期満了の場合だけでなく、辞任してもらう方法、株主総会の決議で解任する方法があります。
ただし、正当な理由がなく役員を解任した場合には、その役員から損害賠償請求をされて賠償金を支払わなければならない可能性があります。
そのような可能性も考慮したうえで、役員の任期を何年にするのがよいのか判断したほうがよいでしょう。
役員任期を短縮した場合は現行の役員が任期満了となることも
役員の任期を短縮することが株主総会決議で可決された場合、現行の役員が株主総会終結時に任期満了となって退任することになる可能性があります。
たとえば、現在の役員任期が5年のところ、2年に変更した場合、2年に変更した時点ですでに現在の役員が就任してから2年が経過している場合には、この変更した株主総会の終結の時点で現在の役員は退任することになります。
そのような場合には、株主総会で役員任期の変更について決議するだけでなく、新しい役員の選任についても決議する必要があります。
このケースでは、役員の退任と新しい役員の就任が発生するため、役員変更登記を申請する必要があります。
まとめ
役員の任期の変更は、定款変更をするだけで済み、登記申請が必要なわけではありません。
任期を変更するときは、自分の会社の実情に合わせて何年くらいにするのがよいのかをよく考えたうえで判断するとよいでしょう。
役員変更登記は定期的に必要となりますが、自分ですべての書類を完ぺきに仕上げることは意外と難しく、かといって毎回司法書士に依頼するとコストが掛かってしまいます。そのような悩みを解消できるのが、簡単な入力で必要な書類がすべて作成できるLegalScript(役員変更登記)です。
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