【代表取締役の辞任】登記までの流れや必要書類は?

代表取締役が任期中に何らかの理由で辞任を申し出ることもあるでしょう。
その場合には辞任の登記が必要となりますが、辞任後も取締役としては残留するかどうかや会社の機関設計などによって、手続きが異なります。
この記事では、代表取締役の辞任にまつわる手続きについてご紹介します。

代表取締役の地位のみを辞任する場合
取締役としては退任せず、代表取締役の地位だけを辞任する場合の手続きと登記の添付書類を説明します。取締役会の有無で内容が異なるのでご注意ください。
取締役会非設置会社の場合
取締役会のない株式会社(取締役会非設置会社)の場合、取締役としては残留して代表取締役の地位のみ辞任することができるとは限りません。
「各自代表」の場合はできない
取締役会非設置会社で代表取締役を定めていない場合、原則として取締役はそれぞれが代表権を持ちます(各自代表)。
各自代表の場合、代表取締役の地位のみを辞任することはできません。
定款で代表取締役の選定についての定めがある場合に限り、取締役の地位と分離され、代表取締役の地位のみの辞任が認められます。
必要な手続き
代表取締役を辞任する旨の辞任届を会社に提出します。
辞任するにあたり、基本的に会社の承認や株主総会の決議が必要というわけではなく、本人が会社に辞任の意思を伝え、辞任届を提出すれば辞任することができます。
例外として、代表取締役を定款で直接定めている場合のみ、定款変更の決議が必要となるので、株主総会の決議で承認される必要があります。
登記申請で必要となる添付書類
登記の際に添付が必要となる書類は辞任届です。この辞任届には会社実印(法務局への届出印)を押印します。会社実印ではなく、個人の実印を押印する場合には、個人の印鑑証明書を添付する必要があります。
辞任届については、以下の記事で詳しく解説しています。
後任の代表取締役を選定する場合の必要書類
ケースによっては後任の代表取締役を選ぶ必要があります。
【後任者の選定が不要なケース】
- 2人以上の代表取締役がおり、一人が辞任しても他の者が残留する場合
【後任者の選定が必要なケース】
- 1人しか代表取締役がいない場合
- 代表取締役が二人いるが、定款で「代表取締役を二名以上置く」と定められており、一人が退任すると一人だけになってしまう場合
新たな代表取締役の選定は、会社の定款の規定により以下のいずれかの方法によって行います。
- 株主総会の決議で選定
- 取締役の互選で選定
- 定款で直接定める
後任者を選定した場合、辞任の登記と同時に新代表取締役の就任登記を行います。必要な書類は下表のとおりです。
代表取締役の 選定方法 | 添付書類 |
---|---|
株主総会決議 | ・株主総会議事録 ・株主リスト ・就任承諾書 ・印鑑届出書と個人の印鑑証明書 |
取締役の互選 | ・互選書 ・互選について定められている定款 ・就任承諾書 ・印鑑届出書と個人の印鑑証明書 |
定款で定める | ・定款変更決議をした株主総会議事録 ・株主リスト ・就任承諾書 ・印鑑届出書と個人の印鑑証明書 |
代表取締役の選定については、以下の記事で詳しく説明しています。

取締役会設置会社の場合
取締役会のある会社(取締役会設置会社)では、代表取締役を選定しなければならないため、取締役と代表取締役の地位は分離されています。そのため、代表取締役の地位のみを辞任することができます。
取締役会設置会社で、代表取締役の地位だけ辞任し、取締役としては残留する場合も、辞任届を会社に提出することで辞任できます。
登記申請に必要な添付書類
辞任の登記に必要な添付書類は辞任届のみです。
また、ケースによっては後任者を選ぶ必要がありますが、取締役会のある会社の場合には、取締役会で後任者を選定します。
後任者の選定が必要なケースかどうかは、前述の取締役会非設置会社の場合と同様です。
代表取締役の就任登記の際は、取締役会議事録を添付します。
代表取締役と取締役の両地位を辞任する場合
続いては代表取締役の地位だけでなく、取締役も辞任する場合について説明します。こちらも取締役会の有無により手続きの内容が異なります。
取締役会非設置会社の場合
取締役会非設置会社で、取締役としても代表取締役としても辞任する場合には、会社に対して取締役を辞任する意思を伝え、「取締役の辞任届」を会社に提出することで辞任が可能です。
「取締役」の地位を辞任すれば、「代表取締役」でいる資格はなくなるため、代表取締役としても当然に辞任することになります。
取締役として辞任をする場合も、代表取締役を辞任する場合と同じ様に、株主総会の決議や会社の承認などは必要ありません。
登記申請に必要な添付書類
取締役の辞任登記に必要となる添付書類は「辞任届」のみです。
ただし、取締役が辞任することで、取締役がいなくなってしまう場合(現在取締役が一人のみの場合)や、定款で決めている人数を下回ってしまう場合(定款で取締役2名以上置くと定めている場合など)には、後任の取締役を選任する必要があります。後任者の選任登記をしなければ、辞任の登記だけを申請しても受理されません。
取締役の選任の決議は、株主総会で行います。取締役の就任登記に必要となる書類は、以下の通りです。
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 就任承諾書
- 新取締役の印鑑証明書
また、ケースによって後任者を選定しなければなりません。
【後任者の選定の必要がないケース 】
- 定款に代表取締役の選定についての記載がなく、取締役が各自会社を代表する場合取締役が一名のみでその者が当然に代表取締役となる場合
【後任者の選定の必要があるケース 】
- 定款に代表取締役の選定についての記載があり、取締役が二人以上いる場合
後任者の選定が必要な場合には、定款で定めた方法に従って代表取締役の後任者を選定します。
新代表取締役は印鑑届出の手続きも必要です。その場合に必要となる書類は、以下の通りです。
代表取締役の 選定方法 | 添付書類 |
---|---|
株主総会決議 | ・株主総会議事録 ・株主リスト ・就任承諾書 ・印鑑届出書と個人の印鑑証明書 |
取締役の互選 | ・互選書 ・定款 ・就任承諾書 ・印鑑届出書と個人の印鑑証明書 |
定款で定める | ・定款変更決議をした株主総会議事録 ・株主リスト ・就任承諾書 ・印鑑届出書と個人の印鑑証明書 |
取締役会設置会社の場合
取締役会のある会社で、取締役と代表取締役の両方の地位を辞任する場合には、「取締役の辞任届」を会社に提出することで辞任できます。
「取締役」を辞任すれば、「代表取締役」でいる資格はなくなるため、代表取締役としても当然に辞任することになります。
取締役の辞任も、代表取締役を辞任する場合と同じ様に、株主総会の決議や会社の承認などは必要ありません。
登記申請に必要な添付書類
取締役の辞任の登記に必要となる添付書類は、辞任届のみです。
ただし、取締役が辞任することで取締役会に最低限必要な人数(三名)より少なくなる場合には、後任の取締役を選任する必要があります。
後任者の選任登記をしなければ、辞任の登記だけを申請しても受理されません。
取締役の選任の決議は、株主総会で行います。取締役の就任登記に必要となる書類は、以下の通りです。
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 就任承諾書
また、ケースにより、後任の代表取締役を選定する必要があります。
【後任者の選定が不要なケース 】
- 現在の代表取締役が二人以上で、一人が辞任してももう一人が残留する場合
【後任者の選定が必要となるケース】
- 代表取締役が一人しかいない場合
- 代表取締役が二人以上いるが、定款で「代表取締役を二名以上置く」という定めがあり、一人が辞任すると二人未満になる場合
後任者の選定が必要なケースでは、取締役会において代表取締役を選定します。
新代表取締役は印鑑届出の手続きも必要です。
登記と印鑑届出に必要となる書類は、以下の通りです。
- 取締役会議事録
- 就任承諾書
- 新代表取締役の印鑑証明書
- 印鑑届出書
まとめ
取締役と代表取締役の辞任については、会社の機関設計(取締役会の有無)や定款の定めによって手続きが異なります。
まずは定款の内容をしっかりと確認し、自分の会社ではどのような手続きが必要となるのかを理解しましょう。
Legal Script(役員変更)で登記書類を簡単作成
代表取締役が辞任したら、役員変更登記が必要です。登記にあたってはさまざまな書類を作成しなければならず、意外と手間がかかります。
そこでおすすめしたいのがLegal Script(役員変更)です。
当サービスを活用すれば、役員変更登記の必要書類を簡単に作成できます。詳しくは「Legal Script(役員変更)を詳しく知る」ボタンよりご確認ください。