本店移転したら必ず定款変更?確認すべきポイントを解説
オフィスの引越しなどで必要になる本店移転登記。
そもそも本店移転とは、文字どおり会社の本店の場所を移すことです。
本店所在地は定款の絶対的記載事項にあたるため、本店を移転したら必ず定款変更しなければならない、そう思っていませんか?
実は、本店を移転しても定款変更を必要としないケースも存在します。
ただし、ほとんどの場合、本店を移転する際には定款変更を必要とします。
定款に記載されている本店所在地の記載から、本店移転時に定款の変更が必要かどうか確認することができます。
今回は本店移転登記において定款変更を必要とするケースについて、さらに管轄内・管轄外の本店移転登記の手続きの流れと必要書類についてご紹介します。
本店移転登記を行う前に確認すべきポイント
まずは、本店移転登記の手続きを行う前に確認しておくべきポイントを2点ご紹介します。
1.定款変更が必要なケースにあたるかどうか
本店移転には定款変更が必要な場合と定款変更が不要な場合の2通りあります。定款の変更が必要になると、株式会社の場合は株主総会を開くなどの手続きが必要ですので、本店移転登記を行う前にしっかりと確認しましょう。
・定款変更が必要な場合
定款変更が必要になる場合とは、定款に具体的な本店所在地まで記載されている場合です。
具体的な所在地というのは、「東京都新宿区1丁目1番1号」のように番地まで記載されているようなものをいいます。
この場合は、極端な例を挙げると隣のビルに移転して所在地が「東京都新宿区1丁目1番2号」に変わっただけでも定款変更が必要になります。
本店所在地は定款の3条で記載されている定款が多いので、まずは3条を確認してみましょう。
3条に記載が見当たらない場合は「当会社は本店を~に置く」と書かれている記述が本店の所在地の記載になりますので、探してみてください。
・定款変更が不要な場合
定款変更が不要な場合をご紹介する前に、定款の本店所在地の記載について説明します。
定款の本店所在地というのは、最小行政区画(市町村・東京都は23区)までを記載すればいいことになっています。つまり、上述の例で言うと「東京都新宿区」まで記載してあればいいのです。
この場合、定款には本店所在地として「本店を東京都新宿区に置く」と記載されます。また、上述の例で説明すると隣のビルに移転しただけ、つまり新宿区内で移転した場合は定款を変更する必要はないのです。
2.本店移転先の法務局の管轄
2つ目のポイントは、本店移転先が現在の法務局の管轄内か管轄外かという点です。これにより手続きが少し変わってきます。
管轄区域内での移転なら、今までと同じ管轄法務局に本店移転登記を申請すれば足り、登録免許税も3万円で済みます。
しかし、管轄区域外へ移転をした場合は、旧本店所在地と新本店所在地どちらの管轄法務局にも本店移転登記の申請をしなければなりません。
2か所に登記の申請をするということは、申請書を2通作成しなければならないということです。申請が2件になるため、登録免許税も2件分(6万円)必要になります。
申請書を2通作成するので「2か所それぞれで登記の申請が必要なの?」と思うかもしれませんが、旧本店所在地の管轄法務局に登記申請書2通をまとめて提出することで、新本店所在地の管轄法務局へ職権で送付してもらえます。
本店移転登記の手続き
会社法では、登記事項に変更があった場合にはその変更を生じた日から2週間以内に変更登記をしなければならないと定められています。
したがって、定款変更が必要であろうがなかろうが、本店を移転した場合には本店移転登記を申請しなければなりません。
ここでは管轄区域内の場合と管轄区域外の場合とに分けて、それぞれの手続きの流れと申請書類についてご紹介します。
管轄区域内で本店移転した場合
管轄区域内で移転した場合は、定款変更の必要の有無によって手続きの流れが変わってきます。
定款変更が必要な場合は、まず株主総会を開催し、株主総会の特別決議によって株主の同意を得なければなりません。そして、取締役会において具体的な本店の移転場所と移転する日を決めます。
取締役会を設置していない会社の場合は、取締役の過半数の一致をもって決議を行うことになります。
定款変更が不要な場合は、株主総会を開催する必要がないため、必要な手続きは取締役会の開催のみです。
必要書類
・本店移転登記申請書
・株主総会議事録、株主リスト(定款変更が必要な場合のみ)
・取締役会議事録または取締役の過半数の一致を証する書面
管轄区域外で本店移転した場合
管轄区域外で移転した場合の手続きの流れは、管轄区域内で移転した場合の定款変更有りの流れと同じです。
まず株主総会を開催し特別決議によって株主の同意を得、次に取締役会において具体的な本店の移転場所と移転する日を決定します。
取締役会を設置していない会社の場合、取締役の過半数の一致をもって決議を行います。
管轄区域外に移転する場合は必ず定款変更が必要になります。
管轄区域内の場合と異なるのは旧本店所在地と新本店所在地の2か所に申請しなければならないため、申請書を2通作成する必要がある点です。
必要書類
・本店移転登記申請書(2通)
・株主総会議事録、株主リスト(1通 旧本店所在地用)
・取締役会議事録または取締役の過半数の一致を証する書面(1通 旧本店所在地用)
・印鑑届出書(1通 新本店所在地用)
印鑑届書は、旧本店所在地管轄法務局の印鑑カードが使用できなくなり、新本店所在地管轄法務局で新たに印鑑登録して印鑑カードを請求するために必要になります。
まとめ
今回は、本店移転登記の手続きについて、定款変更が必要なケースと管轄内外の移転の手続きについてご紹介しました。
本店移転する場合、ほとんどのケースで定款変更が必要になりますが、定款変更を必要としないレアなケースも存在します。
しかし、いずれの場合も2週間以内に本店移転登記の申請が必要です。
もし、これを怠ると100万円以下の過料を科すという罰則も会社法には定められています。
また、本店移転した場合は、登記の申請だけでなく、税務署や年金事務所などでも手続きが必要になるので注意してください。
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