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労務の手続き⑯~従業員が育休を取得する時~

従業員が育休を取得すると、さまざまな制度を利用することができます。

それによって、育休期間中の健康保険料・厚生年金保険料を免除できますし、将来受け取る厚生年金の金額を減らさずに済むこともできます。また、育児休業中に一定期間、原則育児休業開始前の賃金の67%(育児休業開始後181日目以降は50%)を受け取ることもできます。

こういった制度を活用することで、従業員が安心して育児休業を取得できるようになります。今回は、従業員が育休を取得する際にすべき手続きについて解説します。

従業員が育休を取得した際の健康保険・厚生年金の手続き

育児休業等取得者申出書について

育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育児休業等期間について、健康保険及び厚生年金保険料は、事業主の申出により、被保険者分と事業主分が免除されます。

この免除を受けるためには、事業主が、「健康保険・厚生年金保険・育児休業等取得者申出書」を提出する必要があります。

なお、産前産後休業が終了した後も、被保険者が育児のために休業する場合には、この制度を利用すれば、社会保険料の負担を軽減できます。

保険料免除が受けられる期間

保険料の徴収が免除される期間は、育児休業開始月から、育児休業終了予定日の翌日が属する月の前月(終了予定日が月末の場合には、休業終了月)までです。

免除期間中についても、被保険者資格に変更はなく、保険給付の算定にあたっては、育児休業開始直前月の標準報酬月額が使用されます。

提出先、提出時期、提出方法

「健康保険・厚生年金保険・育児休業等取得者申出書」の提出先は、管轄の年金事務所です。

提出時期は、被保険者から育児休業の取得の申出があった時です。提出期限は特に設けられていませんが、被保険者が育児休業を終了すると、この申出書の提出はできなくなるので、それまでに手続きを済ませる必要があります。

提出方法は、電子申請、郵送、窓口持参のいずれかです。

郵送の場合、日本年金機構が全国の15ブロックに配置した管轄事務センターに送付することも可能です。

なお、添付書類は必要ありません。

様式の取得方法

「健康保険・厚生年金保険・育児休業等取得者申出書」は、年金事務所の窓口で入手できますが、日本年金機構のホームページからダウンロードする方法が簡単です。

記載例の閲覧も同ホームページでできるので、事業主又は事業所の事務担当者が作成することが可能です。

養育期間標準報酬月額特例申出・終了届について

育児介護休業法に基づき、3歳未満の子を養育する期間につき、勤務時間短縮等の措置を受けて働き、それに伴って標準報酬月額が低下した場合、子供が生まれる前の標準報酬月額に基づいた厚生年金額を受け取れます(「養育期間の従前標準報酬みなし措置」といいます)。

この制度が適用されると、養育期間中の標準報酬の低下によって、将来受け取る厚生年金の金額が低くなるという事態を回避できます。

この制度を利用するためには、「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出・終了届」を提出する必要があります。

提出先、提出時期、提出方法

「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出・終了届」の提出先は、管轄の年金事務所です。

提出時期は、被保険者から育児休業の申し出を受けたときとされています。提出期限は特に設けられていませんが、申出書の提出が遅れても2年以内であれば、遡ってこの制度を利用することができますが、それ以上は遡ることができません。この制度を100%活用するためには、休業開始月から2年以内に申出書を提出する必要があります。

提出方法は、郵送か窓口持参のいずれかです。

郵送の場合、日本年金機構が全国の15ブロックに配置した管轄事務センターに送付することも可能です。

様式の取得方法

「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届」は、年金事務所の窓口で入手できますが、日本年金機構のホームページからダウンロードする方法が簡単です。記載例の閲覧もできるので、事業主又は事業所の事務担当者が作成することが可能です。

必要な添付書類

この申出書には、以下の添付書類が必要です。

(1)戸籍謄(抄)本(申出者と子の身分関係及び子の生年月日が証明できるもの)
(2)住民票(申出者と子が同居していることが分かるもの、コピー不可)

従業員が育休を取得した際の雇用保険の手続き

雇用保険の被保険者が1歳(一定の場合には1歳2カ月又は1歳6カ月もしくは2歳)未満の子を養育するために育児休業を取得した場合、一定の要件を満たすとハローワークから育児休業給付金を受けることができます。

育休を取得した従業員が支給要件を満たす場合には、ハローワークに一定の手続きをして、給付金を受け取ることができるようにするといいでしょう。

給付金の受給要件、受給額

給付金を受け取ることができるのは、雇用保険の被保険者で、育児休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12カ月以上ある方です。

給付金の支給金額は、支給単位(1カ月)ごとに、休業開始時賃金日額(休業開始前6か月間の賃金÷180)×支給日数×67%(ただし、育児休業の開始から180日経過後は50%)です。

手続きの手順

支給要件を満たす被保険者が育児休業を取得した場合、被保険者を雇用している事業主が、「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」と「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」を作成し、管轄のハローワークに提出します。

ハローワークで対象者の受給資格を確認できた場合には、事業主に対して「育児休業給付金支給決定通知書」を交付します。この決定書の交付を受けた事業主は、対象被保険者にこの通知書を交付します。その後、支給期間(1か月)を単位として、育児休業給付金が支払われます。

まとめ

子育てをしながらでも労働者が安心して働くことができる職場環境づくりは、少子化対策の決め手となる政策の1つです。働きながらでも、余裕をもって子育てを行い、健全な次世代を育成できれば、国の将来にも非常に良い影響を与えます。

また、育児を理由にした退職者が出ると、会社は技術を持った優秀な人材を失い、大きな損失を被ります。育休対策には社会保険・雇用保険から様々な制度が用意されているので、これらを効果的に活用して育児による離職を防げば、会社の損失を回避できるだけではなく、会社のイメージアップも図ることができます。