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株主名簿とは?記載事項、必要シーン、株主リストとの違いを解説

株式会社が必ず作成しなければいけない書類に、株主名簿があります。株主名簿の存在は知っていても、具体的な内容までは意外と知られていないかもしれません。

この記事では、株主名簿には何を記載する必要があるのか、どんな時に必要になるのかなどについて解説します。

株主名簿とは

株主名簿とは、株式会社が作成する株主についての情報を記載した名簿のことです。

すべての株式会社には、株主名簿の作成義務があります。

そして、株式が譲渡されたり、相続によって株主が変わった場合などは、その都度株主名簿の情報を更新する必要があります。

株主名簿は、株主の情報を維持管理したり、株主の権利を保護するために作成が義務付けられています。

株主リストとの違い

株主名簿と似た書類として、株主リストがあります。

株主リストは、商業登記を申請するときの添付書類の一つです。

株主リストの提出が必要となるのは、次の2つの場合です。

  1. 登記する内容が株主総会決議を必要とする場合
  2. 登記する内容が株主全員の同意を必要とする場合

1.の場合、株主リストには、株主の氏名または名称、住所、株式数、議決権数、議決権割合を記載して、代表取締役が証明します。

2.の場合、株主リストには、株主の氏名または名称、住所、株式数、議決権数を記載して、代表取締役が証明します。

会社の登記で株主総会議事録を提出するときには、株主リストもセットで必要となります。

株主リストの詳細については、次の記事をご覧ください。

株主名簿が必要となるシーン

株主名簿が必要となるシーンとしては、次のようなものがあります。

法人設立届出書を提出するとき

会社を設立したときは、税務署に「法人設立届出書」を提出しなければなりません。

そして、この法人設立届出書の添付書類として、株主名簿が必要となります。

株主等から閲覧請求があったとき

株主及び会社の債権者は、会社に対して株主名簿の閲覧または謄写(コピー)を請求することができます。

この請求に対しては、会社は法令で認められた拒絶事由がなければ拒否することができません。拒絶事由には、請求者が会社の業務の遂行を妨げる目的で請求している場合などがあり、このような不当な目的でない限りは請求を拒むことはできません。

株主総会を招集するとき

株式会社は毎年の定時株主総会のほか、定款を変更する場合など会社にとって重要な事項を決める場合に株主総会を開催しなければなりません。

この時、株主名簿に記載されている株主の住所、氏名または名称宛に株主総会の招集通知を送ります。

株主から名義書き換えの請求があったとき

株主は、住所や氏名・名称が変わったり、株式の譲渡や相続によって株主が変わったりした場合には、会社に対して株主名簿の名義書換を請求します。

請求を受けた会社は、株主名簿の内容を書き換えます。

株主名簿に記載すべき事項(会社法第121条)

株主名簿に記載するべき内容は、会社法で以下のように規定されています。

株主の氏名・名称及び住所

株主が個人の場合には氏名と住所、株主が法人の場合には名称と住所(本店)を記載します。

いずれも省略せずに正確に記載しましょう。

株主の有する株式数とその種類

各株主が所有する株式の数と、その株式の種類を記載します。

普通株式しか発行していない場合はすべて普通株式となりますが、種類株式を発行している場合はその種類別に株式数を記載します。

種類株式には、配当金を優先的に受け取れる「優先株式」や、株主総会で議決権が制限される「議決権制限株式」などがあります。

株式の取得年月日

各株主が株式を取得して株主となった年月日を記載します。通常は、株式の対価を支払った時に株式を取得します。

株券が発行されている場合の株券番号

株式会社には、株券発行会社と株券不発行会社があります。

株券を発行している会社の場合には、株券には株券番号があるので、株券番号を記載する必要があります。

株主名簿の更新

株主名簿は、作成後に内容が変わる場合があり、その場合には記載事項の変更・更新が必要となります。

具体的には、株主の住所や氏名・名称に変更があったとき、株式が譲渡されたり相続が発生して株主が変わったときに変更・更新します。

ただし、会社が株主の変更について主体的に調査して変更・更新する必要はなく、変更があった場合には株主から会社に対して名義書き換えの請求をすることになります。

株主名簿の管理

株主名簿は、会社の本店で管理するのが原則です。

ただし、株主名簿の管理を「株主名簿管理人」に委託する場合には、株主名簿管理人の事務所において保管することも認められます。

株主名簿管理人

株式数の多い上場企業などの場合、ほとんどが株主名簿の管理を株主名簿管理人に委託しています。

株主名簿管理人には個人でも法人でもなることができますが、多くの場合信託銀行や証券代行会社です。

株主名簿管理人に委託する場合、株主名簿管理人の設置の登記をする必要があります。

まとめ

株主名簿は株式会社に必ず必要な書類です。

株主は株式会社の重要な内容の決定権を持つ存在であり、適切にその情報を管理しなければなりません。 そのためには、きちんと株主名簿を作成したうえで、正しく保管、管理しておくことが必要です。