リーガルメディア > 法務 > 法務その他 > 取締役会の書面決議とは?記載内容、手順を解説
法務その他

取締役会の書面決議とは?記載内容、手順を解説

取締役が一堂に会することが難しい会社では、取締役会の書面決議を利用すると便利です。ただし、取締役会の書面決議にはルールがあるため確認しておきましょう。

この記事では、取締役会の書面決議をする場合の手順や議事録の記載内容についてご紹介します。

取締役会の書面決議とは

取締役会は、取締役が実際に集まって決議を行うのが原則です。

ただし、定款に定めがあれば、実際に集まることなく、書面を持ち回るなどの方法で、取締役が書面の内容を確認して意思表示をすることにより、決議を行ったとみなすことができます。これを取締役の書面決議といいます。

「書面」決議といいますが、必ずしも紙の文書である必要はなく、メールで意思表示をする方法も認められます。

書面決議をするためには、定款に以下のような条項を入れておく必要があります。

(定款条項記載例)

当会社は、取締役全員が取締役会の決議事項について、書面または電磁的記録により同意した場合には、当該決議事項を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす。

 ただし、監査役が異議を唱えた場合にはこの限りでない。

※「電磁的記録」とは、メール等を指します。

取締役会の書面決議が必要なケース

取締役会の書面決議についての定めが必要なケースとしては、以下のような会社が考えられます。

取締役の人数が多い

取締役の人数が多い場合、取締役全員のスケジュールを調整して取締役会を開催することが困難です。規模の大きい会社の場合、取締役が10人程度いることもあり、スケジュールを合わせるのは容易ではありません。このような会社においては、書面決議を導入するメリットがあります。

海外在住の取締役がいる

海外在住者や外国人でも取締役になることは可能です。ただし、取締役会に実際に参加するのは容易ではないでしょう。そのため、海外在住者や遠方在住者がいる場合には、書面決議の利用が現実的です。

取締役会決議が頻繁に必要

取締役会の決議が必要な事項として、主に以下のようなものがあります。

  • 重要な財産の処分・譲り受け
  • 多額の借財
  • 株主総会の招集についての決定
  • 代表取締役の選定・解職

これらの決議が頻繁に必要となる会社の場合、その度に実際に取締役会を開催するのは負担が大きく現実的ではありません。そのため、書面決議を活用するとよいでしょう。

書面決議の記載すべき内容

書面決議を行う場合、①取締役の提案書、②取締役の同意書、③取締役会議事録が必要となります。①と②については電子メールでも構いません。

それぞれの記載事項は、以下のとおりです。

取締役の提案書

取締役のメンバーの誰かが、以下の内容を記載した提案書を作成の上、各取締役宛に送ります。

  • 書面決議を行いたい旨
  • 決議する事項
  • 決議事項に同意する場合の意思表示をしてほしい旨とその期限

(例)多額の借財についての決議をする場合

「当社の取締役会につきまして、会社法第370条及び定款第〇条の規定に基づき、その開催を省略し、書面による決議を行いたく存じます。皆様におかれましては、下記の決議事項をご確認いただき、同意していただける場合には同封の同意書にご署名の上、〇年〇月〇日までにご返送ください。

決議事項

1.○○事業のための借入の件(提案者 取締役甲野太郎)

(1)借入の内容

  ・・・(具体的な内容を記載)

(2)借入の目的

  ・・・(具体的な内容を記載)

以上

取締役の同意書

通常、提案書と共に同意書を送付し、署名をして返送してもらえるように手配します。

(記載例)

株式会社○○ 御中

私は、会社法第370条の規定に基づき、以下の提案内容に同意します。

□決議内容1(・・・の件)

□決議内容2(・・・の件)

令和〇年〇月〇日
取締役 乙野二郎 

取締役会議事録

書面決議を行った場合にも、通常の取締役会の場合と同様に取締役会議事録は作成します。

取締役会議事録に記載するのは、以下の内容です。

  • 取締役全員が同意の意思表示を行い書面決議が成立した旨
  • 取締役会の決議があったとみなされた日(取締役全員の同意の意思表示が会社に届いたときに決議があったとみなされます。日付がバラバラで同意書が届いた場合、最後の同意書が届いたときに決議があったとみなされます)
  • 取締役会の決議があったとみなされた提案事項
  • 議事録作成者の取締役の氏名

書面決議の手順

書面決議を行う場合の手順は以下のとおりです。

定款の規定の確認

取締役の書面決議を行うためには、その旨の定款の規定があることが必要です。
定款に書面決議を認める規定がない場合には、事前に株主総会を開催して定款変更を決議することが必要です。

提案書の作成と送信

取締役のメンバーの一人から、前述したような内容の提案書を作成し、各取締役に送信します。提案書には、いつまでに同意書を返信してほしいかを記載しておきます。

また、決議事項についてはできるだけ詳しく具体的な内容を記載しておく必要があります。

同意書の受領

取締役全員からの同意書を受領しなければ、書面決議の成立が認められません。
ただし、特別利害関係者である取締役は決議に参加する資格がないため、同意は不要です。

また、同意を得る必要はないものの、監査役から異議がある場合には書面決議は認められないため、監査役から異議がない旨の証明書に署名してもらうと安心です。

取締役会議事録の作成

取締役全員から同意書が届けば書面決議が有効に認められるため、取締役会議事録を作成します。

議事録に記載する内容は、上述した通りです。

書面決議の注意点

書面決議の注意点としては以下のものがあります。

全員の同意が必要なためハードルが高い

通常の取締役会であれば、取締役全員の同意が必要ではなく、過半数の賛成により決議が可決されます。

しかし、書面決議の場合には、全員の同意が必要となるため、通常の取締役会よりも決議が可決されるためのハードルは高くなります。

1人でも反対者がいる場合には、書面決議による決議は成立しなくなります。

内容によっては書面決議に適さない

会社法上では書面決議が認められる内容であっても、実際には書面決議では不適当な場合もあります。

書面決議の場合、人によっては内容を十分検討せずに、機械的に同意書に署名してしまうケースもあります。

口頭での詳しい説明をし、質疑応答などの機会も設けたうえで検討すべき重要な事案については、通常の取締役会を開催したほうがよいでしょう。

まとめ

取締役会の書面決議は、取締役が実際に集まることが困難な会社にとっては便利なシステムです。
ただし、利用するためには守るべき手順やルールがあるため、しっかりと確認したうえで実施を検討しましょう。