開業資金の調達にも使える「制度融資」を簡単解説
自治体、信用保証協会、金融機関が三位一体で行う制度融資は、資金繰りに悩む中小企業の財務面をサポートします。この記事では、制度融資の概要や仕組み、申請の流れについて説明します。
制度融資の概要
制度融資は、都道府県や市区町村などの自治体が、信用保証協会および金融機関と連携して行います。創業前や創業直後の企業でも比較的利用しやすい制度で、金利や保証料などが優遇されるケースが多い点が特徴です。
制度融資の仕組み
下図のように、制度融資は中小企業、自治体、信用保証協会、金融機関の4者間で行います。
中小企業から申し込みを受けた自治体が、金融機関に融資のあっせんを働きかけます。その際に信用保証協会が保証人となり、さらに、自治体も利子補給を行うなど、金融機関の貸し倒れリスクを軽減する仕組みとなっています。
なお、制度融資は信用保証制度を利用した融資です。信用保証制度とは、信用保証協会が融資の保証人となって中小企業の信用力を補完することで、借入を容易にするものです。
制度融資を利用できる企業
制度融資を利用できるのは原則、以下の資本金または従業員数のいずれかに該当する企業です。
業種 | 資本金 | 従業員数 |
製造業等(建設業、運送業、不動産業を含む) | 3億円以下 | 300人以下 |
ゴム製品製造業 ※ | 3億円以下 | 900人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業・飲食業 | 5000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5000万円以下 | 100人以下 |
ソフトウェア業、情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
旅館業 | 5000万円以下 | 200人以下 |
医業を主たる事業とする法人 | ― | 300人以下 |
※自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業ならびに工業用ベルト製造業は除きます。
また、農林漁業、金融業、遊興娯楽業のうち風俗関連営業、宗教法人、NPOを除く非営利団体などは利用できません。
制度融資の流れ(※東京都の場合)
「平成31年(2019年)度 東京都中小企業制度融資要項」によると、制度融資は、基本的に次のような流れで進みます。
①融資申込
融資申込受付機関(金融機関、信用保証協会、商工会議所、東京都各支庁、東京都産業労働局金融部金融課など)に申し込みます。機関によっては受け付けていない制度があるので、事前に確認しておきましょう。
②審査
申請書類をもとに、各機関で審査を行います。
<①で金融機関に申し込んだ場合>
金融機関の審査に通過したものが信用保証協会へ送付されます。
<①でその他の機関に申し込んだ場合>
申込先機関で融資の対象に該当するか審査され、要件を満たしているものが信用保証協会へ送付されます。
※①で信用保証協会に申し込んだ場合は、次の③保証審査が行われます。
③保証審査
<①で金融機関に申し込んだ場合>
信用保証協会に保証が適切であると判断されたら、金融機関へ信用保証書が送付されます。
<①でその他の機関に申し込んだ場合>
信用保証協会に保証が適切であると判断された場合、信用保証協会が金融機関に融資をあっせんし、信用保証書を送付します。
④融資
信用保証書に基づいて融資が実行されます。
創業時に使える制度融資の例:東京都の「創業融資」
制度融資の一例として、東京都が行う制度融資の「創業融資」を紹介します。
融資対象
創業融資を利用するには、以下のいずれかに該当する必要があります。
<創業前>
事業を営んでいない個人で、2ヵ月以内に東京都で新たに会社を設立する具体的な計画を有している者(個人事業主は1カ月以内)
<創業後>
創業から5年未満の中小企業者または組合(個人で創業し、同一事業を法人化した者で、個人で創業した日から5年未満の者を含む)
<分社化>
東京都内で分社化しようとする具体的な計画を有する会社または分社化により設立された日から5年未満の会社
融資条件
融資条件は下表のとおりです。
資金使途
運転資金、設備資金
融資限度額
3,500万円(創業前の場合は自己資金+2,000万円の範囲内)
融資期間
運転資金 7年以内(据置期間1年以内を含む)
設備資金 10年以内(据置期間1年以内を含む)
融資利率
固定金利と変動金利のいずれかを借入申込者が選択できます
【固定金利】
融資期間により異なります。また融資時の金利が完済まで適用されます。
融資期間3年以内 1.9%以内
3年超5年以内 2.1%以内
5年超7年以内 2.3%以内
7年超 2.5%以内
【変動金利】
「短期プライムレート+0.7%」以内
<責任共有制度の対象外となる場合>
【固定金利】
融資期間により異なります。また融資時の金利が完済まで適用されます。
融資期間3年以内 1.5%以内
3年超5年以内 1.6%以内
5年超7年以内 1.8%以内
7年超 2.0%以内
【変動金利】「短期プライムレート+0.2%」以内
なお、以下のいずれかに該当する場合は、金利が0.4%優遇されます
・産業競争力強化法の認定特定創業支援等事業により支援を受け、区市町村長の証明を受けていること
・商工会議所・商工会、公益財団法人東京都中小企業振興公社又は保証協会より認定特定創業支援等事業に準ずる支援を受け、その証明を受けていること。
返済方法
分割返済(元金据置期間:1年以内)
融資形式
証書貸付 ※融資期間1年以内は手形貸付可
信用保証料
信用保証協会の定めるところによる。※東京都が信用保証料の2分の1を補助
留意点
創業関連保証(2,000万円)および創業等関連保証(1,500万円)を併用する場合は、2口に分けて申し込みます。
引用:平成31年(2019年)度東京都中小企業制度融資要項
制度融資は、東京都の他にも多くの自治体が行っています。詳細については各自治体に確認してください。
まとめ
制度融資は、創業前や事業開始直後の中小企業を支える力強い制度です。しかし、創業時の開業資金として利用する場合、法人設立の準備や開業準備と並行して進めることになるため、とても大変です。
そのような時は、法人設立の手続きをLegalScript(会社設立登記)で行うと効率的です。ITを活用して開業準備をスムーズに行い、開業後のスタートダッシュにつなげてみてはいかがでしょうか。