有限会社の本店移転登記を自分で行う方法
会社の本店の所在地(住所)は登記すべき事項とされているので、本店を移転した場合は本店移転登記をしなければなりません。もちろん、有限会社も該当します。
登記手続は司法書士に依頼しなければならないというイメージがあるかもしれませんが、本店移転登記の手続はそれほど難しいものではありません。
そこで、本記事では自分で有限会社の本店移転登記を行おうと検討している方に、申請方法をわかりやすく解説します。
有限会社のままでも本店移転登記は可能
平成18年5月の法改正により有限会社は株式会社に統合されたため、登記手続をするなら株式会社に組織変更しなければならないと思っている方もいらっしゃるかもしれません。
もちろん、この機会に組織変更するのは構いません。しかし、有限会社のままでも本店移転登記はできます。新たに有限会社を設立することはできませんが、すでにある有限会社は組織変更することなく変更の登記手続はできるのです。
有限会社の本店移転登記手続は、株式会社の場合とおおむね同じですが、少し異なるところもあるので注意が必要です。
有限会社の本店移転登記の申請方法
それでは、本店移転登記はどこに、どのような方法で申請すればいいのかをみていきましょう。
期限:本店を移転した日から2週間以内
会社の登記制度は、広く一般に会社の実態を知ってもらうためにあります。そのため、本店を移転したら、その日から2週間以内に変更登記をする必要があります(会社法第915条1項)。
もし、この期間内に登記手続をしなければ、会社の代表者等が100万円以下の過料に処せられることがあります(会社法第976条1項)。
実際には2週間以上経過した後でも登記手続は問題なくできますし、過料の制裁が課されることも滅多にありません。しかし、登記手続をせずに長期間が経過すると取引上の支障が生じることもあるので、変更登記は早めに済ませておきましょう。
申請先:法務局
登記手続は法務局で行いますが、法務局には管轄区域というものがあります。そのため、どこの法務局に申請するかは本店の移転先や支店の有無によって3つのパターンに分かれます。
同一の法務局の管轄区域内に移転する場合
移転前の本店所在地と同じ法務局の管轄区域内に移転する場合は、その管轄区域の法務局に変更登記を申請すれば足ります。
会社の登記に関する法務局の管轄区域は北海道と東京都は細かく分けられていますが、その他は府県単位となっています。
異なる法務局の管轄区域に移転する場合
移転前と移転後の本店所在地が異なる法務局の管轄区域となる場合は、両方の法務局に変更登記を申請する必要があります。
ただし、移転前の本店所在地の法務局に登記申請書を2通提出すれば、移転後の法務局には職権で送付して手続してもらえます。
支店がある場合
会社に支店があれば、支店登記もされているはずです。本店所在地は支店登記の登記事項でもあるので、本店を移転すると支店でも変更登記の手続が必要です。その場合は支店の所在地を管轄する法務局に変更登記を申請します。
ただし、支店所在地が本店の移転前・移転後いずれかの所在地と同一の管轄区域内にある場合は、支店の変更登記は不要です。
申請方法:窓口持参、郵送など
本店移転登記を申請するには、法務局の窓口に登記申請書を提出するほか、郵送やオンラインでも申請することができます。
書類に不備があると補正が必要になるので、慣れていない方は法務局の窓口で直接申請するほうが安心でしょう。
有限会社の本店移転登記に必要な書類
本店移転登記の申請をするためには、いくつかの書類を提出することが必要です。それほど数は多くないので、ひとつずつご紹介します。
特例有限会社本店移転登記申請書
本店移転登記の申請書の様式は最寄りの法務局で入手できますが、法務局のホームページからもダウンロードできます。
参考:法務局|商業・法人登記の申請書様式
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html#2-4
株式会社用の申請書とは表題が異なるのでご注意ください。
株主総会議事録
移転前と移転後の本店所在地が異なる法務局の管轄区域にまたがる場合は、定款の変更が必要になります。その場合は株主総会の決議が必要なため、株主総会議事録を添付する必要があります。
定款の変更については、後でご説明します。
株主の氏名又は名称、住所及び議決権数等を証する書面
いわゆる「株主リスト」です。株主総会議事録の提出が必要な場合に添付します。株主リストの記載例については、以下の記事で説明していますので、ご参考ください。
取締役の過半数の一致を証する書面
株式会社であれば取締役会議事録を提出しますが、有限会社には取締役会を設けることができません。そのため、取締役の過半数で決議したことを証明する書類を提出します。
書面には、過半数の取締役の同意によって本店移転が決定した旨を記載し、取締役の記名押印をします。法務局のホームページに「取締役決定書」として記入例を掲載していますので、ご参照ください。
印鑑届書
会社を設立すると、代表者印を法務局に届け出なければなりません。移転前と移転後の本店所在地が異なる法務局の管轄区域にまたがる場合は、移転後の法務局に新たに印鑑届を行う必要があります。
定款の変更が必要なことも
有限会社にも株式会社と同様、定款があります。定款には本店所在地を必ず記載しなければならないことになっています。そのため、本店を移転すれば定款の変更が必要になる場合があります。
ただし、定款に記載しなければならない本店所在地は最小行政区画までとされています。最小行政区画とは、基本的には市町村までですが、東京都は特別区まで、政令指定都市は市までとされています。
したがって、定款に本店所在地を最小行政区画までしか記載していない場合で、同一の最小行政区画内で本店を移転する場合は定款の変更は不要です。
定款に最小行政区画以降の住所も記載している場合や、異なる最小行政区画に移転する場合は定款の変更が必要になります。
定款の変更には株主総会の特別決議が必要
有限会社の株主とは、従前は社員(出資者)と呼ばれていた人のことです。出資口数がそのまま株式数とみなされ、その株式数が議決権数となります。
有限会社における株主総会の特別決議は、総株主の半数以上が出席し、総株主の議決権の4分の3以上が賛成することが必要です。
この決議要件は株式会社の場合よりも厳しくなっているので、注意が必要です。
本店移転登記に必要な費用
有限会社の本店移転登記をするためには登録免許税がかかります。その他にも、支店の変更登記が必要な場合は登記手数料、郵送で申請する場合は送料、オンラインで申請する場合は電子証明書の取得費がかかります。
オンライン申請は便利ですが、電子証明書の取得費が少なくとも2,500円はかかるため、法務局の窓口で直接申請するのが最もやすくなります(交通費は除きます)。
登録免許税
登録免許税は1件につき3万円です。異なる法務局の管轄区域に移転する場合は移転前と移転後の両方の法務局で登記手続が必要なため、2件分で6万円の登録免許税が必要になります。
また、支店について本店移転の変更登記が必要な場合は、1件につき9000円の登録免許税が必要です。
登記手数料
支店について本店移転の変更登記が必要な場合は、支店所在地の法務局1庁につき300円の登記手数料がかかります。
ただし、支店が本店所在地と同じ管轄区域内にある場合は不要です。
費用の納付方法
登録免許税や登記手数料を納めるときは収入印紙を購入し、登記申請書に付属の収入印紙貼付台紙に貼付します。収入印紙は法務局でも販売されています。
他の方法としては、金融機関で登録免許税を納付し、その領収証書を収入印紙貼付台紙に貼付することもできます。
一般的には、収入印紙を利用する方が便利でしょう。
まとめ
有限会社の本店移転登記は司法書士に依頼すれば楽ですが、自分で行ってもそれほど難しいものではないことがおわかりいただけたでしょうか。
自分で行うと少なくとも数万円の司法書士報酬を節約することができるので、挑戦してみるといいでしょう。
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