社外取締役って何?選任したら登記は必要?
社外取締役とは、経営の透明性を図るために社外から起用する取締役のことで、多くの大企業では2名以上を置いています。
今回は、この社外取締役の概要や選任したら登記は必要であるのかなどについて説明します。
社外取締役とは
社外取締役とは、文字どおり、その企業の出身ではない社外の経営者や有識者などから選任する取締役のことですが、まずは社外取締役の概要について説明します。
社外取締役の役割
社外取締役の役割は、他の取締役とのしがらみや利害関係がないという第三者的立場から、客観的にその企業の経営状況を監視し、意見することで、コーポレートガバナンス(企業統治)の強化を図ることです。
特に、その企業で長く勤めてきた取締役しかおらず、取締役会が健全に機能しなくなっているような企業では有効な存在であると言えます。
社外取締役の要件
社会取締役の定義については、会社法第2条第15号に規定されており、株式会社の取締役であって、次の①から⑤の要件にすべて該当する者とされています。
つまり、自社やグループ会社の役員である者、役員であった者(過去10年間)、また、自社の役員などの親族は社外取締役にはなれないということです。
会社法第2条(定義)第15号 社外取締役(要約)
株式会社の取締役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいう。
①当該株式会社またはその子会社の業務執行取締役、執行役、支配人その他の使用人(以下「業務執行取締役等」という。)でなく、かつ、その就任の前10年間当該株式会社またはその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。
②その就任の前10年内のいずれかの時において、当該株式会社またはその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)、監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては、当該取締役、会計参与、監査役への就任の前10年間当該株式会社またはその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。
③当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)または親会社等の取締役、執行役、支配人その他の使用人でないこと。
④当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。
⑤当該株式会社の取締役、執行役、支配人その他の重要な使用人、親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者または2親等内の親族でないこと。
社外取締役の任期
社外取締役の任期は、社内の者から選任した取締役と同様です。
取締役の任期は、原則2年ですが、定款で短縮することもできます。また、非公開会社(定款で全部の株式に譲渡制限を設定している株式会社)の場合には定款で10年まで伸ばすこともできるようになっています。
社外取締役としての任期は、多くの企業ではその役割などを考慮して、1年から2年(更新あり)としていることが多いと言えます。
社外取締役の選任義務化の動き
社外取締役を選任することは、多くの中小企業などにおいては任意ですが、上場企業など一定の要件を満たす企業であれば、必ず選任しなければなりません。
その根拠は会社法と東京証券取引所が公表している「コーポレートガバナンス・コード」にあります。
会社法の改正
会社法では、社外取締役について以下の規定があり、会社の状況によっては社外取締役を選任する義務があります。
また、2019年12月に成立した改正法では、以下の1つ目の条文(会社法第327条の2)が見直され、監査役会設置会社(公開会社かつ大会社であるものに限る。)であり、その他一定の要件に該当する会社については、社外取締役の設置が義務付けられることとなりました。(2021年3月1日施行予定)
会社法第327条の2(社外取締役を置いていない場合の理由の開示)(要約)
監査役会設置会社(公開会社かつ大会社であるものに限る。)であり、その他一定の要件に該当する会社が社外取締役を置いていない場合には、取締役は、定時株主総会において社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない。
※2015年5月1日施行の改正法で追加
会社法第331条(取締役の資格等)第6項
監査等委員会設置会社の監査等委員である取締役は3人以上で、その過半数は社外取締役でなければならない。
会社法第373条(特別取締役による取締役会の決議)第1項(要約)
重要財産の処分や譲り受けなどの重要な事項を決定できる3人以上の特別取締役を選任するためには、取締役が6人以上であり、かつ、そのうち1人以上は社外取締役でなければならない。
会社法第400条(委員の選定等)(要約)
指名委員会等設置会社の各委員会は委員3人以上で組織し、その過半数は社外取締役でなければならない。
コーポレートガバナンス・コードの原則
東京証券取引所が2015年6月1日から上場企業に適用している「コーポレートガバナンス・コード」(2018年6月1日改訂)では、以下の通り独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきとされています。この独立社外取締役の要件は、会社法上の社外取締役より要件が厳しくなっています。
コーポレートガバナンス・コードに法的拘束力はないものの、上場企業であれば従わざるを得ないルールになっています。
コーポレートガバナンス・コード【原則4-8 独立社外取締役の有効な活用】
独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである。
また、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社は、上記にかかわらず、十分な人数の独立社外取締役を選任すべきである。
社外取締役の登記手続き
社外取締役であっても取締役であることに変わりはありませんので、取締役としての登記手続きは社内の者から選任した取締役と同様です。
ただし、その社外取締役が会社法上、選任が求められている社外取締役である場合には「社外取締役である旨の登記」も必要になります。
取締役としての登記
社内の者から選任した取締役と同様、次のとおり、就任や退任、重任のタイミングで登記手続きが必要になります。
就任登記
社外取締役が就任したときは、原則として、そのことを決議した株主総会の日の翌日から起算して2週間以内に変更登記申請書やその他関係書類を管轄法務局に提出しなければなりません。
社外取締役を含む役員の就任登記に必要な書類などについては以下の記事で解説しています。
退任登記
社外取締役が退任するケースとしては、任期満了や辞任、解任、死亡、欠格事由(成年被後見人や成年被保佐人に該当するなど)の発生があります。
その社外取締役が上記の事由によって退任したときは、そのことを決議した株主総会の日または該当日の翌日から起算して2週間以内に変更登記申請書やその他関係書類を管轄法務局に提出しなければなりません。
社外取締役を含む役員の退任登記に必要な書類などについては以下の記事で解説しています。
重任登記
重任とは、任期満了で退任すると同時に就任すること(いわゆる再任のこと)ですが、そのことを決議した株主総会の日の翌日から2週間以内に変更登記申請書やその他関係書類を管轄法務局に提出しなければなりません。
社外取締役を含む役員の重任登記に必要な書類などについては以下の記事で解説しています。
社外取締役である旨の登記
先に説明したとおりですが、会社法上、その会社の状況によっては必ず社外取締役を選任しなければならない場合があります。就任あるいは重任した社外取締役が、次に該当する社外取締役である場合には、上記の取締役としての登記のほか、登記簿の「役員」欄に社外取締役である旨の登記も必要になります。
- 特別取締役による議決の定めがある場合の社外取締役
- 指名委員会等設置会社の社外取締役
- 監査等委員会設置会社の社外取締役
つまり、上記に該当しない社外取締役については、社外取締役である旨の登記は不要(できない)であり、登記簿上は単に取締役になるということです。
まとめ
社外取締役を選任することは、上場企業など一定の要件を満たす企業であれば、事実上義務になっており、会社法の改正により2021年3月からは法的な義務になる予定です。
社外取締役の登記手続きは、原則として社内の者から選任した取締役と同様ですが、その社外取締役が、会社法上選任が求められている場合には社外取締役である旨の登記も必要になりますので注意しましょう。
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