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印紙はなぜ貼る?今さら聞けない収入印紙のキホン

会社設立時の定款作成や契約書の発行などで必要となる「収入印紙」は、ビジネスのさまざまなシーンに登場するため、馴染みのある人も多いのではないでしょうか。

しかし、「印紙はなぜ必要なの?」「どんな時に貼ればいいの?」と首をかしげる人も、きっといるはずです。そこで「今さら聞けない収入印紙のキホン」と題し、収入印紙の基本的な知識や役割について解説します。

収入印紙は全31種類

収入印紙の種類は額面によって異なり、全31種類あります。以下の収入印紙を納税額にぴたりと合うように組み合わせ、課税文書に貼付します。

<1~1,000円:18種類>
1円、2円、5円、10円、20円、30円、40円、50円、60円、80円、100円、120円、200円、300円、400円、500円、600円、1,000円

<2,000~10万円:13種類>
2,000円、3,000円、4,000円、5,000円、6,000円、8,000円、1万円、2万円、3万円、4万円、5万円、6万円、10万円

収入印紙は郵便局等で購入できる

収入印紙を販売している場所はいくつかありますが、郵便局での購入が一般的です。コンビニでも購入可能ですが、店舗によっては販売している種類が少ない場合があります。

その他、法務局や市区町村役場などでも購入できます。市区町村役場は、地域によっては販売していない場合があるので事前に確認することをおすすめします。

収入印紙の役割

収入印紙は、国に税金や各種手数料などを支払うときに使用します。収入印紙での納税で代表的なものが登録免許税印紙税です。

登録免許税は、登記、登録、許可、認可などの申請をするときに納める国税の一種です。また、印紙税とは課税対象となる文書(課税文書)を発行すると納付義務が生じる税金です。収入印紙を課税文書に貼り、消印することで納税します。その他、各種手数料や罰金、科料等の支払いでも収入印紙を使用します。

ここからは、収入印紙が必要となるケースについて、確認していきましょう。

登録免許税の納付

会社の商業登記や不動産登記で生じる登録免許税は原則、現金納付です。しかし、登録免許税額が3万円以下の場合、収入印紙による納付が認められています。

例えば、会社の商業登記等では、「同一管轄法務局内での本店の移転登記(3万円)」や「取締役、代表取締役、監査役等、役員に関する事項の変更登記(申請1件につき3万円。資本金1億円以下の会社は1万円)は収入印紙による納税で足りる場合があります。

ただし、3万円を超える場合でも収入印紙での納付を認めてくれることがほとんどですので、通常は3万円を超える場合でも収入印紙で登録免許税を納めます。

なお、登録免許税については、以下の記事で詳しく解説しています。ご参考ください。

>登録免許税って何? 意味、金額、支払方法を解説

印紙税の納付

収入印紙が必要とある1つ目のケースは、印紙税の納付です。収入印紙の利用シーンのほとんどを占めるといってもよいでしょう。

印紙税とは課税対象となる文書(課税文書)を発行すると納付義務が生じる税金で、収入印紙を課税文書に貼り、消印することで税金を納めます。

国税庁のホームページでは、次の3つのすべてに該当する文書が課税文書であると記載されています。

  1. 印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること。
  2. 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。
  3. 印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。

※国税庁ホームページより引用

上記で注目したいのは、1.の「20種類の文書」です。「印紙税法別表第1(課税物件表)」(印紙税額一覧表)では、次の文書を課税文書としています。

契約書

☑不動産、鉱業権、無体財産権、船舶、航空機、営業の譲渡に関する契約書
不動産売買契約書や不動産交換契約書などが該当します。契約金額が1万円未満の契約書は原則、非課税です。なお、無体財産権とは産業財産権(特許、実用新案、意匠、商標)や著作権、商号などを指します。

☑地上権や土地の賃借権の設定・譲渡に関する契約書
土地賃貸借契約書や土地賃料変更契約書などが該当します。契約金額が1万円未満の契約書は原則、非課税です。

☑消費貸借に関する契約書
金銭借用証書や金銭消費貸借契約書などが該当します。契約金額が1万円未満の契約書は原則、非課税です。

☑運送に関する契約書
運送契約書や貨物運送引受書、傭船(チャーター船)契約書が該当します。乗車券や乗船券、航空券、送り状は該当しません。なお、契約金額が1万円未満の契約書は原則、非課税です。

☑請負に関する契約書
工事請負契約書や工事注文請書、物品加工注文請書、広告契約書などが該当します。契約金額が1万円未満の契約書は原則、非課税です。

☑合併契約書、吸収分割契約書、新設分割計画書
会社法もしくは保険業法に規定する合併、または会社法に規定する会社分割についての契約書および計画書が課税文書になります。

☑継続的取引の基本となる契約書
特約店契約書や代理店契約書、業務委託契約書などが該当します。契約期間が3ヵ月以内で、更新の定めがないものは該当しません。

☑信託行為に関する契約書
信託証書も課税対象に含まれます。

☑債務の保証に関する契約書
消費貸借の元本や利息の返還債務といった主たる債務の契約書に併記するものは除きます。また、「身元保証ニ関スル法律」に定める身元保証に関する契約書は非課税です。

☑金銭または有価証券の寄託に関する契約書
寄託とは、Aさん(受寄者)がBさん(寄託者)のためにモノを保管する契約のことをいいます。AさんがBさんのために金銭または有価証券を預かり、それに対して「預り証」を発行する場合、その預り証は課税対象になります。

☑債権譲渡または債務引受けに関する契約書
記載金額が1万円未満のものは非課税です。

受取書(領収書)

☑売上代金に係る金銭または有価証券の受取書
商品販売代金、不動産の賃貸料、請負代金、広告料などの受取書(領収証)は課税文書に該当します。5万円未満のものは非課税です。また、営業に関係ないもの、有価証券や預貯金証書などに追記した受取書も印紙税はかかりません。

☑売上代金以外の金銭または有価証券の受取書
借入金や保険金、損害賠償金、補償金、返還金の受取書(領収証)が該当します。こちらも5万円未満のもの、営業に関係ないもの、有価証券や預貯金証書などに追記した受取書は非課税です。

☑配当金領収書、配当金振込通知書
記載金額が3,000円未満のものは非課税です。

手形

☑約束手形、為替手形
金額が10万円未満の手形や金額が書かれていない手形、手形の写しは非課税です。なお、後で金額を補充(白地部分に金額を記載)した場合は補充した人が納税義務者となり、記載した金額が10万円以上の場合は収入印紙の貼付が必要となります。

株券、証券

☑株券、出資証券(投資証券)、社債券、投資信託、貸付信託、特定目的信託、受益証券発行信託の受益証券
日本銀行など特定の法人が作成する出資証券、譲渡が禁止されている特定の受益証券は非課税です。

☑倉荷証券、船荷証券、複合運送証券
法定記載事項の一部を欠く証書であっても類似の効用がある場合は課税の対象になります。

☑保険証券
保険会社から交付される保険証券は課税対象です。

定款

☑定款
会社設立時に作成する定款の原本は課税対象です。なお、株式会社または相互会社の定款で公証人の保存するもの以外は非課税です。

証書

☑預金証書、貯金証書
信用金庫など特定の金融機関で、預入額が1万円未満の預金証書および貯金証書は非課税の対象になります。

その他

☑信用状
貿易決済で用いられる手段で、銀行が発行する信用状(支払い確約書)は課税文書です。

☑預金通帳、貯金通帳、信託通帳、掛金通帳、保険料通帳
信用金庫など特定の金融機関の預貯金通帳、所得税が非課税となる普通預金通帳、納税準備預金通帳は非課税の対象になります。

☑消費貸借通帳、請負通帳、有価証券の預り通帳、金銭の受け取り通帳など
先述の「預金通帳、貯金通帳、信託通帳、掛金通帳、保険料通帳」を除く通帳が該当します。

☑判取帳
金銭の受取人に金額や名前などに記入してもらう判取帳も課税文書です。

それぞれの課税文書に貼付する収入印紙の額については、以下の記事で紹介しています。

>印紙はいくら貼る?押さえておくべき収入印紙で納める税額

手数料や罰金の支払い

収入印紙は、許認可申請の手数料や国家資格(司法試験や司法書士試験、公認会計士試験、税理士試験等)の受験手数料の支払いにも使用します。また、罰金や科料、刑事追徴金、訴訟費用なども収入印紙による納付が認められています。

収入証紙やその他の印紙との違い

収入印紙とよく似たワードで「収入証紙」というものがありますが、これはまったくの別物なので要注意! 収入印紙は国が法律に基づいて発行するものであるのに対し、収入証紙は地方自治体が条例に基づいて発行するものです。収入証紙で収入印紙を代用することは当然できません。なお、東京都や広島県など、収入証紙を廃止している自治体もあります。

また、収入印紙の他にも、特許や商標など産業財産権の出願・更新等で使用する「特許印紙」をはじめ、「雇用保険印紙」「健康保険印紙」「農産物検査印紙」「自動車検査登録印紙」「自動車重量税印紙」などの用途別の印紙が存在します。もちろん、他の印紙による代用はできません。

まとめ

以上が収入印紙の基本的な知識です。印紙税や課税文書など聞き慣れない言葉もありますが、ビジネスにおいて頻繁に登場するものなので、最低限の知識は蓄えておきましょう。