労働保険料還付請求書の書き方(記入例つき)
労働保険では、年度ごとに当該年度の保険料を概算で納付し、あわせて、前年度に納付した保険料の精算を行うことになっています。
これを「年度更新」と言いますが、この手続きの際、また、事業を終了(廃止)した場合などに保険料を納め過ぎていることがわかれば、その額は還付されることになっています。
「労働保険料・一般拠出金 還付請求書」(以下「労働保険料還付請求書」)とは、この還付金を受け取るために提出するものです。
今回は、この「労働保険料還付請求書」の概要と、実際の書き方について記入例も参考にしながら解説します。
労働保険料還付請求書とは
労働保険とは労災保険と雇用保険のことを指しますが、保険料については、年に1回、「年度更新」という手続きで、前年度の保険料を精算するための「確定保険料」の申告・納付と、当該年度の「概算保険料」の納付・申告を同時に行うことになっています。
労働保険料に還付金が発生するのは、主に次のようなケースで、これらに該当する場合に「労働保険料還付請求書」を提出することになります。
①年度更新時に、前年度に納付した概算保険料の額が確定保険料の額を上回り、その差額を当該年度の概算保険料の額と一般拠出金(※)の額に充当、あるいは、そのどちらか一方に充当(どのように充当するかは選択可)しても前年度に納付した概算保険料の額に残額がある場合
※「一般拠出金」とは、「石綿による健康被害の救済に関する法律」の規定に基づいて、賃金総額の一定割合を負担しなければならないもので、労働保険料とあわせて納付することになっています。
②事業を終了した場合(※)に、労働保険料を精算した結果、納付した概算保険料の額に残額がある場合
※事業を終了(廃止)すると、その時点で労働保険料を精算しなければならないことになっています。
上記に加えて、確定保険料に誤りがあり、その後、修正申告を行うことで還付金が発生することもあります。概算保険料に誤りがあった場合には、基本的に次年度の年度更新で清算することが多いと言えます。
労働保険料還付請求書の提出時期・提出先
通常の年度更新時に発生した場合
労働保険料還付請求書は、通常の年度更新時に還付金が発生した場合には、6月1日から7月10日の間(その年の営業日により多少異なります。)に、保険料の申告書とあわせて、管轄の労働基準監督署に提出します。
事業廃止時に還付金が発生した場合
事業廃止時に還付金が発生した場合には、事業を廃止した日から50日以内に、保険料の申告書とあわせて、管轄の労働基準監督署に提出します。
申告書を先に提出してもOK
ただし、法律上の整理では、還付を受ける権利が時効で消滅するまでには2年あるため、まずは保険料の申告書だけを提出し、あとで労働保険料還付請求書を提出することもできます。
労働保険料還付請求書の記入例とポイント
労働保険料還付請求書の書き方について、記入例を参考にしながらポイントを説明します。
労働保険料に還付金が発生するケースは様々ですが、例えば、年度更新時の状況が下記のとおりである場合には、次のような労働保険料還付請求書になります。
[年度更新時の状況]
・前年度に納付した概算保険料の額:1,156,032円
・確定保険料の額:615,476円
・一般拠出の額:1,135円
・充当方法:当該年度の概算保険料には充当せず、一般拠出金にのみ充当する。
①金融機関・郵便局
還付金を振り込んで欲しい金融機関(ゆうちょ銀行を含む。)の名称や支店の名称、口座番号などを記入します。
また、還付金を振り込みではなく、郵便局の窓口で受け取ることもできます。これを希望する場合には「郵便局」欄に、受け取りたい郵便局の名称と住所を記入します。
②還付請求額
様式内に説明があるとおりですが、前年度に納付した概算保険料の額や確定保険料の額、また、その差額やどのように充当したのかなどについて記入します。
③労働保険料等への充当額内訳
充当を行った事業所の労働保険番号と、何に充当したのか、また、その額を記入します。
④事業所の住所・名称、事業主の氏名・押印
事業主の氏名を事業主自らが署名する場合には押印は不要ですが、ゴム印を押印したり、パソコンで入力する場合には、法人である限り、基本的に代表者印(いわゆる丸印)の押印が必要です。
⑤還付理由
還付金が発生したのが年度更新時であれば、「1」、事業終了によるものであれば、「2」、その他であれば、「3」を記入します。
「3」のカッコ書きの「算調」とは、労働基準監督署の「労働保険料算定基礎調査」(労働保険料の適正な徴収を目的とした立入調査)のことですが、これを受けた際に還付金が発覚することもあります。
まとめ
労働保険料に還付金が発生するケースは様々ですが、労働保険料還付請求書を提出しないと、還付金は受け取れません。
還付金が発生するかどうかは、年度更新時や事業終了(廃止)時など、確定保険料を計算したときにわかるため、申告書とあわせて速やかに提出するようにしましょう。