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外国人技能実習制度とは?受け入れ方法なども解説

外国人技能実習制度とは、発展途上国の外国人に我が国の技能や技術、知識を習得してもらい、母国に帰ってその技術などを活かしてもらうための制度です。

今回は、外国人技能実習制度の概要や受け入れ方法などについて解説します。

外国人技能実習制度とは?

外国人技能実習制度とは、発展途上国の外国人に我が国の技能などを習得してもらうために、企業や個人事業者などが外国人を技能実習生として受け入れ、その者と雇用契約を締結することで最長5年間、働いてもらうことができる制度です。

この制度自体はかなり前からあるものですが、外国人技能実習生を低賃金で働かせるなどトラブルが増加してきたこともあり、政府は、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(以下、「技能実習法」)を平成28年11月18日に成立、平成29年11月1日に施行させ、これまで以上により細かなルールが定められています。

制度の目的・基本理念

外国人技能実習制度の目的は、技能実習法第1条において「技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図り、もって人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術又は知識の移転による国際協力を推進すること」とされています。

さらに、外国人技能実習制度の基本理念は、同法第3条において「技能実習は技能等の適正な修得、習熟又は熟達のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行われなければならない」、「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」とされています。

つまり、外国人技能実習制度とは、あくまで我が国の技能などを外国人技能実習生に習得してもらうための制度であり、受け入れ企業側が人材不足を解消するため、あるいは、人件費を抑えるために活用する制度ではないことは十分に理解しておく必要があります。

受け入れ対象国

外国人技能実習生が技能実習の査証(ビザ)を取得するためには、日本と外国人技能実習生として送り出す国との間で技能実習を適切に円滑に実施するための二国間協定(協力覚書)が締結されている必要があります。

現時点において、日本がこの二国間協定を締結している国は、ベトナム、カンボジア、インド、フィリピン、ラオス、モンゴル、バングラデシュ、スリランカ、ミャンマー、ブータン、ウズベキスタン、パキスタン、タイ、インドネシアの14か国のいわゆる発展途上国になりますので、外国人技能実習生は基本的にはこれら国から受け入れることになります。

ただし、厳密に言えば、上記で説明した技能実習法の施行前から一定の取り決めのあった中国、ネパールや、日本の協同組合などが外国の政府や行政機関と直接契約を締結している国からも受け入れることも可能です。

外国人技能実習生の在留資格の種類・対象となる職種

外国人技能実習生の在留資格は、入国してからの年数などによって次の「技能実習第1号イ・ロ」、「技能実習第2号イ・ロ」、「技能実習第3号イ・ロ」の3つに分けられます。
※上記の在留資格に付されている「イ」とは、このあと説明する「企業単独型」による受け入れであることを指し、「ロ」については「団体監理型」による受け入れであることを指します。

なお、「技能実習第2号イ・ロ」、「技能実習第3号イ・ロ」については、受け入れ可能な職種・作業が定められていますので注意が必要です。

技能実習第1号イ・ロ

技能実習1年目の在留資格になります。原則として最初の2か月間は座学の講習であるため、この期間中は受け入れ企業と外国人技能実習生との間に雇用関係はありませんが、この講習が終わったあとは、雇用契約を締結したうえで技能実習に入ることになります。

この「技能実習第1号イ・ロ」では、同一作業の反復のみで修得できるものでないこと、かつ、制度の目的でもある発展途上国への技能移転や経済発展に寄与する技能などであれば、原則として実習可能な職種・作業に制限はありません。

技能実習第2号イ・ロ

技能実習2年目、3年目の区分になります。ただし、上記の「技能実習第1号イ・ロ」からこの区分に移行するためには、外国人技能実習生が所定の試験に合格する必要があります。

この「技能実習第2号イ・ロ」については、移行対象職種・作業として、農業や漁業、建設関係ほかの85の職種、156の作業が定められています。(令和3年3月16日時点)

技能実習第3号イ・ロ

技能実習4年目、5年目の区分になります。ただし、上記の「技能実習第2号イ・ロ」からこの区分に移行するためには、外国人技能実習生が所定の試験に合格するほか、受け入れ企業が優良な実習実施者であると認定される必要があります。

この「技能実習第3号イ・ロ」については、移行対象職種・作業として、上記の「技能実習第2号イ・ロ」の移行対象職種・作業の中からさらに限定された77の職種、135の作業が定められています。(令和3年3月16日時点)

「技能実習第2号イ・ロ」と「技能実習第3号イ・ロ」の移行対象職種・作業の詳細については、下記の外国人技能実習機構(OTIT)のホームページでご確認ください。

> 移行対象職種情報/外国人技能実習機構(OTIT)
https://www.otit.go.jp/ikoutaishou/

外国人技能実習生の受け入れ方法・必要な手続き

外国人技能実習生の受け入れ方法、また、必要となる手続きは次のとおりです。

受け入れ方法

外国人技能実習生を受け入れる方法としては、次の「企業単独型」と「団体監理型」の2つの方法があります。

①企業単独型

企業が単独で海外の現地法人や合併企業、取引先企業の常勤職員を受け入れ、技能実習を実施する方法です。

この方法によって外国人技能実習生を受け入れるためには、基本的には海外に支店や子会社、合弁会社があるか、一定の取り引き実績がある企業があることなどが条件となりますので、一般的には大企業が選択できる受け入れ方法であると言えます。

②団体監理型

営利を目的としない中小企業団体や商工会議所などが「監理団体」となって外国人技能実習生を受け入れ、その団体に加入している企業において技能実習を実施する方法です。

日本に在留する外国人技能実習生の9割以上は、この「団体監理型」での受け入れとなっており、上記の「企業単独型」よりも一般的な受け入れ方法となっています。

この方法により、複数の中小企業などがこの「監理団体」を設立するところから始めることも可能ではありますが、既に多数の「監理団体」が存在するため、ほとんどの中小企業では自社に見合った「監理団体」に加入し、外国人技能実習生を受け入れています。

なお、この「監理団体」には、外国人技能実習生の労働環境や実習内容などについて優良条件を満たした「一般監理団体」と、優良条件を満たしていない「特定監理団体」の2種類に分けられます。「一般監理団体」では、「技能実習第1号ロ」、「技能実習第2号ロ」、「技能実習第3号ロ」のすべての受け入れが可能であるのに対し、「特定監理団体」では、「技能実習第1号ロ」、「技能実習第2号ロ」のみの受け入れしかできないことになっています。

全国にどのような「監理団体」があるのかについては、下記の外国人技能実習機構(OTIT)のホームページで確認できます。

> 監理団体の検索(Search for Japanese Supervising Organizations)/外国人技能実習機構(OTIT)
https://www.otit.go.jp/search_kanri/

受け入れに必要な手続き

外国人技能実習生を受け入れるためには、主に次の手続きが必要になります。
※ここでは、一般的な「団体監理型」による受け入れに必要な手続きについて説明しています。

①監理団体への加入

「監理団体」によってどの国とのつながりが強いのか、また、主にどのような職種・作業についての受け入れを行ってきたのかなど、それぞれで異なります。まずは、多数存在する「監理団体」の中から、自社が求める外国人技能実習生を受け入れることができる「監理団体」に加入します。

②技能実習計画の作成・認定申請

受け入れる外国人技能実習生の技能実習の内容などについて、「監理団体」の指導に基づいて「技能実習計画」を作成し、外国人技能実習機構(受け入れ企業の所在地を管轄する地方事務所・支所)に提出してその計画の認定申請を行います。

なお、この認定申請は、原則として技能実習の開始予定日の6か月前から申請することができ、遅くとも4か月前までには申請しなければならないことになっています。

③在留資格認定証明書の交付申請・本人に送付

上記の技能実習計画についての認定通知書が交付されれば、出入国在留管理庁(受け入れ企業の所在地を管轄する地方出入国在留管理官署など)に外国人技能実習生の在留資格認定証明書の交付申請を行います。

さらに、この在留資格認定証明書が交付されれば、外国人技能実習生に送付します。これは、外国人技能実習生が在外日本国公館で査証(ビザ)を取得するため、また、入国時に本証明書の提示が必要であるためです。

※通常、これらの手続きは受け入れ企業ではなく「監理団体」の方で行います。

外国人技能実習制度や受け入れ手続きなどの詳細については、下記の厚生労働省のホームページでご確認ください。

> 外国人技能実習制度について/厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/global_cooperation/index.html

外国人技能実習生の労務管理

外国人技能実習生を受け入れる企業の中には、上記で説明した外国人技能実習制度の目的や基本理念などを理解せず、外国人技能実習生を低賃金で働かせるなど、トラブルになっているところも少なくありません。

まず、外国人技能実習生を受け入れる企業として理解しておくべきことは、外国人技能実習生であっても、雇用契約を締結して働いてもらう以上は、日本人の従業員を雇い入れた場合と同様に労働基準法など労働関係法令の適用を受ける(受け入れ1年目の座学講習期間(原則2か月間)を除く)ことになるということです。

このため、外国人技能実習生の賃金などの労働条件は同じような業務に携わる日本人の従業員と同等にする必要がありますし、外国人技能実習生に最低賃金を下回る賃金を設定することや、残業をさせながらその分の割増賃金を支払わないことは当然に違法となりますので注意してください。

また、各種トラブルを防ぐためにも、雇用契約書あるいは労働条件通知書は、外国人技能実習生の母国語で作成し、労働条件や賃金などについて十分理解してもらっておくことも求められます。

まとめ

外国人技能実習制度は、上記で説明したとおり、外国人技能実習生に我が国の技能や技術、知識を習得させ、その技能などを母国に持ち帰って活躍してもらうことを目的としている制度ですが、実態としては人材不足を補うため、また、人件費削減のためにこの制度を活用している企業が多いことも事実です。

外国人技能実習生を受け入れる企業としては、各種のトラブルを避けるためにも、あらためてこの制度の目的や理念、また、日本人の従業員と同様に労働関係法が適用される労働者であることを十分理解しておくようにしてください。