取締役(会社役員)を追加する手続きは?手順と必要書類を解説
事業が軌道に乗ってきたり会社の規模が拡大したりすると、取締役の追加・増員を検討するのではないでしょうか。取締役を追加するには、会社の内容に応じて必要な手順を踏まなければなりません。
この記事では、取締役を追加する場合の手順や必要書類について解説します。
取締役追加までの流れ・手続き
取締役を追加するための一般的な手続きについて、取締役会のある会社(取締役会設置会社)とない会社(取締役会非設置会社)に分けて解説します。
取締役会のある会社の場合
取締役会設置会社が取締役を追加する場合の基本的な流れは、次の通りです。
- 取締役会で株主総会開催を決定
- 株主総会の開催
- 取締役会の開催(代表取締役を変更する場合のみ)
- 役員変更登記の申請
それでは、各手順について簡単に説明します。
1.取締役会で株主総会開催を決定
取締役の追加(選任)を決議できるのは株主総会です。取締役会だけで取締役の追加を決めることはできません(候補者の選定は可能です)。
まずは取締役会において、取締役追加を決議するための株主総会の開催について決定し、株主に対して株主総会の招集通知を送ります。
2.株主総会の開催
株主総会で取締役の追加について決議します。決議は普通決議で、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席者の議決権の過半数の賛成によって可決されます。
選任された人が就任することを承諾すると、取締役の追加が有効に成立します。
3.取締役会の開催(代表取締役が変更する場合のみ)
追加で就任した取締役を代表取締役にする場合には、取締役会を開催し、代表取締役の選定の決議を行います。
取締役会で出席者の過半数が賛成することで、決議が可決されます。
4.役員変更登記の申請
取締役が追加された場合には、役員変更登記を申請する必要があります。
必要な書類を作成し、就任から2週間以内に登記申請を行います。
新たな取締役追加の登記については、以下の記事で詳しく説明しています。
取締役会がない会社の場合
取締役会非設置会社が取締役を追加する場合の基本的な流れは、次の通りです。
- 取締役が株主総会開催を決定
- 株主総会の開催
- 代表取締役の決定(各自代表でない場合のみ)
- 役員変更登記の申請
こちらの手順も簡単に説明します。
1.取締役が株主総会開催を決定
取締役の追加を決議するのは株主総会です。取締役が株主総会の開催を決定し、株主に対して株主総会招集通知を送ります。
2.株主総会の開催
株主総会の開催については、取締役会のある会社の場合と同様です。
3.代表取締役の決定(各自代表でない場合のみ)
取締役会のない会社の場合、基本的に取締役は各自が代表権を持ちます(各自代表)。つまり取締役全員が代表取締役になるということです。
ただし、定款で「取締役が複数いる場合には、取締役の互選により代表取締役を選定する」などと定めている場合があります。この場合には、取締役同士の話し合い(互選)によって代表取締役を選ぶ必要があります。
4.役員変更登記の申請
取締役会のある会社の場合と同様に、役員変更登記を申請する必要があります。
新たな取締役追加の登記については、以下の記事で詳しく説明しています。
必要書類
取締役を追加する場合の役員変更登記に必要な書類は、以下のとおりです。
(1)株主総会議事録
取締役の選任について決議した際の株主総会議事録を作成します。株主総会議事録の記載事項については、次の記事をご参考ください。
参考記事:株主総会議事録に記載すべき事項とは?
(2)株主リスト
株主総会開催時の株主について、株主リストを作成します。
(3)取締役の就任承諾書
取締役に選任された者が承諾した旨を証明する書類です。ただし、株主総会議事録に、「取締役が席上就任を承諾した」ことが明記されている場合には、就任承諾書を省略することができます。
参考記事:役員の就任承諾書は印鑑に注意!ポイントを解説(作成例あり)
(4)新たに就任した取締役の印鑑証明書(場合により必要)
新たに就任した取締役について、以下のいずれかの場合には印鑑証明書が必要となります。
- 取締役会のない会社の場合
- 取締役会のある会社で、新取締役が代表取締役になる場合
(5)取締役の本人確認証明書(場合により必要)
上記(4)の印鑑証明書が必要ない場合には、本人確認証明書が必要となります。
本人確認証明書は、①住民票、②運転免許証等の裏表のコピーに「原本と相違ない」と記載して記名したものなどです。
参考記事:【本人確認証明書】役員変更の登記申請で何を提出する?
(6)取締役会議事録(場合により必要)
取締役会のある会社で、代表取締役についても変更した場合には、取締役会議事録が必要です。
(7)取締役の互選書(場合により必要)
取締役会のない会社で、代表取締役を選定した場合には、互選書が必要です。
参考記事:取締役の互選って何?互選書の書き方は?(記入例あり)
(8)定款(場合により必要)
取締役会のない会社で代表取締役を互選した場合には、互選することを定めている定款が必要です。
取締役追加時の注意点
取締役を追加する場合、以下の点に注意が必要です。
定款の定員をオーバーしないか
会社の定款で、取締役の人数を制限している場合があります。
たとえば、「取締役は3名以内とする」などとしているケースがあります。現在3名の取締役がいる場合には、現在の定款のままでは取締役を追加することができません。
このため、取締役の追加をする前提として、定款変更をしなければなりません。
定款変更は、株主総会で決議します。事前に人数の制限がないか定款の内容を確認しておきましょう。
任期が他の取締役とずれないか
取締役を追加する場合、在任中の取締役と任期がずれてしまう場合があります。
取締役の任期が3年の場合に、在任中の取締役が2年目に新たに取締役を追加すると、在任中の取締役はあと1年で任期が終わるのに対し、追加された取締役はこれから3年となると、任期がバラバラになって役員の変更手続きが複雑になってしまいます。
そのような事態を避けるためには、定款に「増員により選任した取締役の任期は、その選任時に在任する取締役の任期の満了する時までとする」などと定めておくことで、取締役の任期を全員揃えることができます。
まとめ
取締役を追加するための手続きは、定款の内容や取締役会の有無によって異なります。それらを事前にしっかりと確認したうえで、正しい手順で手続きを進めましょう。取締役の追加により、会社の活性化やさらなる事業拡大が期待できることも多いでしょう。
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